僥倖-happiness-

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海を怖がらずにあの後もお父さんについて行っておけばよかった。


そうしたら私も素の彼と接することができたのかな。


こんな風に思うのは欲張りだろうか。


わがままなのだろうか。



「あ、このパスタってもしかして。」


「以前食べたいとおっしゃっていたゴルゴンゾーラのクリームパスタです。」


「でも2つ…？」


「父はチーズが食べられないので。」


「淳さんチーズ苦手だったの？」


「嫌いだな。」


「えー、せっかく娘さんが作ってくれたのに。残念。」


「嫌いなもんは嫌いなんだよ。」


「お父さんはこれね。」



カットトマトが入ったナポリタン。


これはお母さんがよく作る料理。


お父さんが好きなんだとか。



「お母さんには、負けるけど。」


「AはA、ママはママ。勝ち負けとか比べるもんじゃないぞ。」



3人でテーブルを囲んで手を合わせた。



「んー！美味しっ！チーズ濃厚でいいですね。トリュフとの相性も抜群です。」


「よかったです、お口に合って。」


「こっちも美味い。ありがとな。」


「…うん。」


「淳さんひと口ちょうだい。」


「あ？やだよ。これは俺のだ。」


「いいじゃんひと口くらい。これ食べていいから。」


「チーズ嫌いだっつってんの。」



なんだかんだ分けてあげるお父さん。


彼のひと口がまあまあ大きくて文句を言っている。


そしてそれを見て、何歳になっても男の子だなと呆れる私。


久しぶりに誰かとご飯を食べてたくさん笑った日になった。

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